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学校では教わらなかった(?)テンのうち方を紹介

本や新聞を読んでいると”テン”(読点)のうち方が人によって異なることに気づきますが、そういえば英語ではカンマのうち方について文法を学ぶものの、日本語のテンについて文法の”決まり”は学校で教わらなかった気がします。
今回は学校で教えてくれない(?)テンのうち方について詳しく書かれている『実戦・日本語の作文技術』から、テンのうち方を一部抜粋して紹介していきます。

テンの2大原則

次はテンをうつときの2大原則を見ていきます。
①長い修飾語が2つ以上あるときその境界にうつ
②語順が逆になるときにうつ

①の「長い修飾語が2つ以上あるときその境界にうつ」について具体例をみていきましょう。
「新宿区に住んでいた慶野さんが川崎市に郷愁を抱いている志賀さんに横浜市を憎んでいる阿南さんを紹介した。」

これではパッと見たところわかりにくいので次のようにテンをうってみます。
「新宿区に住んでいた慶野さんが、川崎市に郷愁を抱いている志賀さんに、横浜市を憎んでいる阿南さんを紹介した。」

これで川崎市に郷愁を抱いているのは慶野さんではなく志賀さんであることがはっきりしました。

このように、修飾語が長くてかつ複数あるときは、例文のようにテンをうつと文章が整理されて読みやすくなるのです。

次に②の「語順が逆になるときにうつ」の語順が逆になるとはどんなときでしょうか。
「慶野さんは麻雀が大好きだった。」
この文章の語順を逆にすると、
(a)「麻雀が大好きだった慶野さんは。」
のようになります。

(a)では意味がちょっと変わってしまいます。「麻雀が大好きだった」が修飾語になってしまい「慶野さんは」のあとに文章が続きそうです。

なので、元の意味どおり読んでもらうためには
(b)「麻雀が大好きだった、慶野さんは。」
のようにテンをうちます。

こうすれば「大好きだった」を修飾語ではなく「慶野さんは」に対応する動詞として認識できます。

ある語句を強調したいときなどは上記のように主語と述語を入れ替えることがあると思います。その際は意味が変わってしまわないよう、テンを効果的に使いたいです。

テンを打つとむしろ読みにくくなることも

ここまでテンをうつときの原則を紹介しましたが、テンをうたないほうがいいケースはあるのでしょうか。

本では“原則”としては紹介されていませんが、以下の2つのパターンで整理できるでしょう。

①語句を羅列する場合
②変な位置にテンをうつ

①「語句を羅列する場合」とは、たとえば以下の文章です。

「阿南さんは好きなのはラーメン、バイク、映画、コーラです。」

このテンをナカグロ(・)にすると、
「阿南さんは好きなのはラーメン・バイク・映画・コーラです。」

この例だったら「別にテンでも同じじゃないか」と思う方もいるかもしれませんが次の例ではどうでしょう。

「ホッピーが好きな慶野さんは、梅酒、缶チューハイが好きな阿南さんに、焼酎、ウイスキー、ビールのおいしさを熱弁した。」

ちょっとテンが多くて読みにくいです。

ナカグロにして整理すると、
「ホッピーが好きな慶野さんは、梅酒・缶チューハイが好きな阿南さんに、焼酎・ウイスキー・ビールのおいしさを熱弁した。」
となり、文章を整理していたテンと語句を羅列していたテンの区別がついて読みにくさが解消されます。

②の「変な位置にテンをうつ」というのも具体例で見ていきましょう。

(a)「慶野さんが、阿南さんを部屋に呼んだあとに会社のメンバーの一人である、ダイエット中の志賀さんは、コーラを飲みほした。」

ぱっと見たところコーラを飲みほしたのが慶野さんなのか志賀さんなのか一瞬迷ってしまいます。

さらに「志賀さん」に対する修飾語は
「会社のメンバーの一人である」
「ダイエット中の」
ですが、間にテンをうってしまうと2つとも「志賀さん」に対する修飾になのかもちょっと迷ってしまいます。

ちなみに、1つの語句に複数の修飾語がかかる際にはテンをうたずとも、語句に対して「長い修飾語を先に」なるようにすれば文章の意味を取り違える心配もなく読みやすくなると本で紹介されています。

例えば
「会社のメンバーの一人であるダイエット中の志賀さんコーラを飲みほした。」
という文章では
(a)「会社のメンバーの一人である」
(b)「ダイエット中の」
が「志賀さん」という名詞にかかる修飾語ですが、この原則に従っているのでテンをうたなくても問題ありません。むしろ本では「不要なテン」や「うってはいけないテン」として紹介しているテンのうち方に分類されてしまいます。

話を戻すと、最初の文章は

(b)「慶野さんが阿南さんを部屋に呼んだあとに会社のメンバーの一人であるダイエット中の志賀さんはコーラを飲みほした。」

で問題ないということです。

どうしてもテンを入れたいとしても、以下のように場所を考えないと意味が誤って伝わってしまう可能性があるので注意したいところです。
(c)「慶野さんが阿南さんを部屋に呼んだあとに、会社のメンバーの一人であるダイエット中の志賀さんはコーラを飲み干した。」

ちなみに、本では「思想のテン」として”不必要”でもうってよいテンがあると紹介しています。強いていえば(c)のテンは「思想のテン」にあたるでしょう。

まとめ

日本語の語順に関する原則とテンの打ち方を『実戦・日本語の作文技術』に沿って紹介しました。
本ではほかにも原則が紹介されていますが、よく使いそうな点のみの紹介としています。
あらためてまとめると、
〇語順を入れ替えたらテンをうつ
〇長い修飾語がつづくときは境界にテンをうつ
〇語句を羅列するときはナカグロ(・)を活用する
〇日本語の原則に従えば基本テンをうたなくてもよい(うってはいけない場合もある)
となります。

「文章を書くときは必ずこれに従え!」とはいいませんが、何点か参考にしてもらえれば文章がわかりやすくなり誤読も防げそうです。

※ちなみに「息継ぎのタイミングでテンをうつ」という意見もたまに聞きますが、息継ぎのタイミングは人によって異なるので個人的にはあまりおすすめできません。

テンの打ち方についてもっと詳しく知りたいかたは参考書籍をお読みください。

参考:『<新版>実戦・日本語の作文技術』(朝日新聞出版)本多勝一 著 

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